いつもなら夜出発の我々ですが、この日ばかりは全員午後から早退で夜10:00ごろには登山口となる伊那市に。
しかしココからまずはハプニング、路面の凍結が激しく4WDのスタットレス車が見事にスリップ状態・・・
このまま河原沿いの戸台公営駐車場に下りたら2度とあがって来れない状況に(汗)
誰もが頭をよぎったのは
登る前から敗退・・・(汗)
そりゃ~もう渾身の力をこめて安全地帯まで車を押しましたよ。
疲れた・・・
まさかこんな細い坂道をくだった先にあの広大な戸台公営駐車場がある?なんて想像も付きません。
ガサガサと獣(鹿とテン)が暗闇から目を光らせ僕らを見つめる中、確認の為 本当に河原があるのか歩いて行きました(涙)
あったー! ありましたよー! 駐車場 よかった~
とりあえず、間抜けな落ちは免れたようです(笑)
さて、明日の準備を整え先ずは車中にて乾杯~!!
ジャパン買いすぎ(汗) まさか全部飲むんですか?と突っ込まれたり・・・ 明日があります、それは無理です(笑)
外気温は-10度でしょうか? 3人で車中泊という事もありテン泊とは別にライトな寝袋を準備。
僕はイスカのエアー280、 隊長と副隊長はナンガで作った止水センターファスナーを装着したスカイハイ別注モデル!
ナンガで言うとナノバック300と似てると思います。
エンジンを停止した-10度の車中泊でも全員寝汗で頭がぐっしょり・・・ 登る前から髪の毛濡れたと悲惨な状況でした。
狭い空間で寄り添って寝る計算で作られてる山用寝袋。。。 この時期、寝袋記事が多いので参考までに♪
AM2:00起床! 車は安全地帯に放置していく事に。
でも車って登山口までアクセスできて便利なようにも見えますが、ここは除雪車も入らないような山道、
万が一 我々の地元のように予想以上の降雪があったりでもしたら雪が解けるまで2度と動けない状況も・・・
低かろうが高かろうが冬山っていろんな意味で容易なところではありませんね。
AM3:15 windy Jv隊長が代表して登山計画書をポストインします、出発!
ノートレース、あるのは獣の足跡のみ・・・ さて頑張って歩きましょう!
あっち行ってはこっち行ってと川を渡りながら、時折現れる巨大な砂防ダムを「どーやって越えるの????」
などと迂回しながら丹渓山荘跡を目指します。
200名山のノコギリ岳への標識です^^ 岩登りのあるコースでこちらはクライマーの方が冬季に入るルートですね。
ようやく夜が明けてきました、盲目の河原歩きからようやく開放されます。
今回、河原歩き部分は先頭を行く自分ですが、ヘッデン(ヘッドライト)の電池を新しくしてきたにも拘らず低温でドロップダウン・・・
隊長・副隊長の使うヘッデンは極地用の低温に強いヘッデンらしく素晴らしい能力を見せ付けられた(汗)
ザックもパリッパリに凍っちゃってました(笑)
丹渓山荘手前、角兵衛沢最後の木橋。
隊員達の見上げるその先には!!
小仙丈ケ岳2855mと南アルプスの女王「仙丈ケ岳」へ伸びる稜線が!!
小とは言え、すごい迫力です・・・
ココからは予想外の凍結で沢沿いへの滑落を防ぐ為にもアイゼンを装着、
ところが降雪も多く場所によってはラッセルとのWパンチ、ワカンを装着する訳にも行かず
かと言って東北ではお家芸のスノーシューも南アルプスの急登とアイスの斜面を前にしたらタダのオモリ。
アイゼンと壷足で我慢の続く樹林帯・・・ 先が読めないコンディションと、この肌を刺すような低温。
容易に装備の付け外しや休憩を取れる状態じゃない、とたんに身体が冷えてくる。
我慢のアイゼンが続きようやく取り外して、速やかに栄養補給。
ポケットのおにぎりも
ザックの中の菓子パンも
凍っちゃってます(涙) シャリシャリと口の中で・・・とける。
天気予報の風速は軽く20m以上・・・ 降雪した雪がまるで白竜のごとく天高く舞います。
標高1500mも越えてないのに手元の温度計は-17度付近・・・ 3000m地点の気温は?
晴れてるにもかかわらず これが厳冬期の仙丈ケ岳かと内心、恐怖を感じた。
途中、埋もれていた標識を掘ってあげる。
ノートレース、ラッセル、樹林帯、アイス、 まったくもって一定しないコンディションにひたすら壷足が続く。
3000m級を登る方が言う・・・ 冬山を登るのに絶対に必要な道具はアイゼン・ピッケル・テルモス。
ワカン・スノシューと言う言葉は一切でない。
その昔、何度も質問した。。。 ワカン・スノーシュー どちらを持っていくべきか?
3000m級を登る方の答え 「どちらも必要ないですよ、邪魔なだけです」
どーしてもと言うなら、せめて「ワカン」くらいはイイでしょう。
でも、「使う場面が限られます」
2000m級では多用してきたワカン、直登に強く、機動力が高く、その上軽い、
装着時から運搬まで体力の消耗が非常に少ない。
そんな冬山には欠かせない!と思ってきた道具が3000m級では容易に出せない。。。
「どちらも必要ないですよ、邪魔なだけです」
経験とはこの事か。
冬山をやるなら「道具に頼らない壷足のラッセルを極めてください」
忘れていた言葉、あまりにも便利で道具に頼りすぎて忘れていた、最初のアドバイス。
壷足のラッセルが出来ない、いやそこまでの体力が無い我々に
人も入らない3000m級の冬山など登れるわけがない。
悔しくて、悔しくて にじむ涙を拭うグローブ。。。 悔しさを忘れない為にも記録に残す。
水滴など存在しない氷点下の環境でうっすら濡れるグローブ 、次の瞬間
瞬く間に乾き凍っていく・・・
ああ、、、自分はとんでもない場所に来てるんだ、今まで登り詰めてきた冬山はなんだったんだろう。
ズッキーさんの言葉と共に家族の顔がよぎる 「判断に迷った時には家族の顔を思い出して決断!!」
自分の中で答えは出ていた、後は隊長の指示が出るまで歩を一歩でも上へ進めるだけ。
きっと口にしないが、チーム全員が同じ答えを持って最後の急登に入ったと思う。
甲斐駒ヶ岳2967m
その姿を目にし勇気がわく。
一歩でも上に。
雪壁を作り深く掘り下げられ跡が・・・ テン場を目前としながらも、この地点でのビバークは想定外の状況下と読む。
やはり甘くない3000mへのアクセス。
ようやく樹林帯にも陽が挿し、肌を突き刺すような寒さから開放されるも 2度足をつってしまい倒れこむ自分。
とうとうチーム1体力のあるcherry副隊長も股関節の痛みで倒れる・・・
ラッセル、キックステップ、荷物の分担など他の隊員への心使い
本当に申し訳ない・・・
windy jv隊長 そして鎮痛剤が効いてきた自分とで交代で前を進む、 モナカ雪が足に効く・・・
先頭を行く僕はお尻まですっぽり埋まるようになる・・・
すでに行動時間は8時間、予定2時間もオーバー、、、
正月のデータだとここまでトレースはしっかりあり、おおよそ6~8時間かけて登ってくるのが一般的らしい。
ノートレースにも関わらず数字だけで見れば上出来だった。
さて、目と鼻の先にはテン場があり、そこでテントを設営し、せめて小仙丈ケ岳だけでも明日の朝、登頂できるように
森林限界までラッセルでトレースをつけるか? でも死亡事故はその先で起こっている。
稜線での早朝行動はガチガチに凍結し大変危険を伴う・・・ これは槍ヶ岳で経験済み。
その上、強い風も吹いてきておりココで夜にでも雪が降られたら下山のラッセルも命がけ。
windy jv隊長の最終判断を待つ。
今ならまだ間に合う、即下山しましょう! 敗退です、お手上げポーズを(笑)
その前に僕を引き抜いてくださいよ~ (涙)
そーと決まれば、雪深い大平山荘を跡に即撤退開始。
途中、鎮痛剤の追加と栄養補給を行う。
カレーパンはカチカチに凍って霜が付いてます(汗) 歯で切断するように食べる・・・
安達太良山ピストンくらい距離の残ってます(涙)
危険箇所や沢沿いのトラバースがあるのでアイゼン装着です。
登ってきた急登をアイゼンでガシガシ下山です。
本日、2回目。。。 8kmの河原歩きです(涙)
僕らのトレースは強風ですでに無くなってました・・・
振り返ると強風の中、一気のガスに包まれる南アルプス、下山は正解だったかもしれません。
誰もいない戸台駐車場に無事到着。
カチカチの行動食たち(笑)
中央道ではタイヤチェック。。。
地元はこの冬一番の大雪(汗) 雪山はこれからです、後3ヶ月以上も楽しめますから~
※自分の中ではあまり厳冬期と言う括りは無く、カテゴリーも積雪期と残雪期としか区別しておりませんでした。
一般的な登攀記録においては3月からは残雪期となるそうです、まさに自分らが行ったタイミングは
すでに厳冬期・積雪期を外れているかもしれません。
にも関わらず、この度、ヤマレコも含め厳冬期とタイトルに明記させて頂いたのは「誰も山には立ち入らない時期」という
自分が感じた冬山の難易度としてのタイトルでした。 誤解があったらすいません。
地元、山形県は日本有数の豪雪地帯1月中旬から2月下旬にかけてもっとも過酷な冬となります。
今も外出すら出来ず地吹雪に閉ざされた職場の中でコソコソとブログを書いてます。
早く春の訪れを感じ、家族とのキャンプなど妄想を膨らませたいところです。
第2章 飛翔編
巣立ち 「3,000m峰への挑戦」
南アルプスの女王
仙丈ケ岳 3032m
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